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目を覚ますと広いダブルベットの隅で恋人に抱き着くように眠っていたことに気付いた。

 

ベッドを出て、窓から景色を眺める。山下公園には犬の散歩をする人々がおり、船上の旗は風に揺れる。まだ太陽が昇ってきたばかりのようで、空は白っぽい色合いをしていた。窓際の椅子に座って、インスタントコーヒーを飲みながら川上未映子のエッセイを読み進めた。ベッドには白いシーツにくるまれて眠り続ける恋人。

 

湯船にたっぷりと熱い湯をためて朝風呂に浸かった。ホテルのバスタブが好き。背中側の傾斜がゆるやかで、寝そべるような姿勢になれるから。昔から朝風呂自体も好きだった。夜よりも一層清潔な気分になるのだ。

 

お風呂の音で目を覚ました恋人が眠そうな顔のまま私の方に腕を広げたから、そこにすべりこんで微睡んだ。

 

チェックアウトを済ませると、前日に入れなかった旧館に入ってみた。窓が大きく天井が高く開放的なつくりではあるけれど、重厚な色合いの家具や壁紙、カーペットによってどこか静まり返った重たい雰囲気があった。素敵な洋館。

 

ホテルを出て山下公園に入ると、風が涼しく夏の終わりを感じた。ベンチに腰掛けてしばらく海を眺めた。

 

シーバスに乗り、みなとみらいへ向かう。前夜ホテルから見ていた船に今度は自分が乗っていて、なんだか不思議。恋人はまるで子どものように楽しげな様子だった。

 

アニヴェルセルカフェでランチを食べることにした。前日、夏が終わってしまう前にテラス席でビールを飲みたいねと話していたから、日陰のテラス席に座ってハイネケンを飲んだ。目の前に海が見えていて、とても気分がいい。ビーフストロガノフとハンバーグプレートを注文し、2杯目のビールと共にゆっくり味わった。

 

プレゼントに腕時計がほしいというわがままに付き合ってもらい、横浜駅のデパートでnojessの店舗に入ったけれどあまりピンとくるものが無くすぐに駅に戻ると、代官山に本店があることが分かり、そのまま電車で代官山に向かった。ゴールドの華奢な時計がまっすぐ目に入り、いくらかチェーンの種類を迷ったうえで恋人も私も気に入ったものを選んだ。小さなダイヤがついていて綺麗。

 

腕時計をはめたまま帰路に就き、荷物を片付け一休み。夕食はいきつけの日本酒バルに向かった。店長がお店で一番高級な鍋島をごちそうしてくれた。本当にあんなに美味しい日本酒は初めて飲んだ。空心菜炒めやしめ鯖、無花果の白和えをつまみながら日本酒を飲んだ。

 

帰り道、恋人が私をマンションに送り、さみしいからあなたの家の前までついていくと恋人のマンションがある方面へ信号を渡り、また彼が私のマンションのある方面へ信号を渡るという往復。